東京市場No.1の為替・債券ディーラーとして名を轟(とどろ)かし、「伝説のディーラー」と呼ばれた藤巻健史が、初めての本格テキストを執筆。著者が得意とする為替や債券、金利などの話題を中心に、講義形式で解説している。講義の参加者は、著者のホームページ「プロパガンダ」の読者が中心で、さすがにレベルが高い。そのため、本書でも実践に即した興味深い質疑応答がなされている。 『外資の常識』を筆頭に、これまでの著書ではジョークを連発し、一流トレーダーの側面をなかなか見せなかった著者だが、本書では業界慣行や専門用語に触れながら、本格的な投資理論と実務の解説をしている。理論がわかれば、「外債投資ですよ。金利高いですよ。だけどヘッジしていますから、安全ですよ」といった妙なセールストークや、新聞ではお決まりの表現である「モノとサービスの黒字を表す経常収支」など、現実世界のウソを見抜くための知恵も身につく。一般投資家にとってブラックボックスとなっていた部分を明らかにしたという点で、大変貴重な1冊であろう。 トピックも、ヘッジファンドの手法やアジア通貨危機、国債、財政赤字問題、著者が買ったハワイのコンドミニアムの話など、興味深いものを数多く取り上げている。読者がプロならば、著者のモルガン時代のディーリング手法について詳しく触れた下巻が参考になるだろう。 上巻では為替と金利を題材に市場のしくみを、下巻ではデリバティブやスワップをそれぞれ解説している。金融のしくみを根本から学びたい人や、フジマキ流の投資戦略を知りたい人に、ぜひおすすめしたい1冊である。(土井英司)
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